ドキュメンタリー映画『普通に生きる』

2012.9.1(土)

 静岡県富士市にある重度障害者の生活介護事業所「でら〜と」の設立から5年間の取り組みを記録したドキュメンタリー映画『普通に生きる』を見ました。下記に映画の公式ホームページのURLを載せておきますので、興味のある方はぜひご覧になってみてください。

 http://www.motherbird.net/~ikiru/

 

 このタイトルに接したときから、そもそも『普通』ってどういうことだろう…と考えてしまいましたが、映画の中で「でら〜と」の職員心得に『−普通ーという概念は時代とともに変化していく。常に社会から学び、自分も成長していく姿勢を大切にする』と書いてある場面が出てきます。『普通』という概念は、確かにその時々によって変化するものです。昔は当たり前だったことが、今の時代では通用しないといったことがたくさんあります。重い障害のある人たちは、かつては家の中に隔離され、世間には知られないようにひっそり暮らしていました。やがて1人の人間として尊重され、福祉による支援の制度も整備されてきました。それでも、障害者の家族、特に障害を持って生まれた子どもの親は、自分がこの子を守らなければ、という気持ちが強かったと思います。そこに、いわゆる『親亡き後』という問題も生じてきました。

 でも、この映画に登場する親たちは、もちろん自分の子どもに障害があるとわかった時には、なかなかそれを受け入れられずに悩み、悲しみ、死まで考えたという人がほとんどですが、子どもたちと生活するうちに、その子どもたちの笑顔や生命力に自分たちのほうが力をもらって、子どもの自立や自己実現をめざすことはもちろん、自分自身の自己実現にも取り組むようになっていきます。そして、自分たちで動いて必要な施設や制度までをつくってしまうのです。

   何より画面に登場する人たちの活き活きとした表情、笑顔を見ているだけで、本当にこちらの心が洗われるような気持ちになります。彼らの存在そのものがすばらしいことなのだと心から感じました。

 また、自立、自立と言いますが、なんでも自分でできることが自立なのではなくて、他人の支援を上手に受け入れて、自分の生活を成り立たせることができることも立派な自立なのだと気付かされます。

 この映画は今年の初め頃からミニシアター等でロードショーされていましたが、関東地域でのロードショーは終わってしまったために、私は杉並区の浴風園という介護施設の中のホールを借りて、NPO法人が開催した自主上映会に足を運んでみました。たまたまこの映画を作成した「マザーバード」の本拠地が杉並だということで、制作スタッフで撮影とプロデュースを担当した貞末麻哉子さんがいらして、上映後に映画にかける想いや撮影エピソード等をお話ししてくださいました。それがまた、映画を観終わったあとに聞くと、とてもわかりやすく、より映画の理解に役立ちました。

 貞末さんのお話の中で、私の心に特に残ったのは、制度が最初からあったわけではなくて、必要に迫られた人たちが、色々な壁を突破してつくりあげてきたものだということです。

 この映画、ロードショーが終了してからも口コミで評判が広まり、各地で自主上映が行われているようです。新聞等にも取り上げられています。なかなか重度の障害のある方に接したり、触れ合う機会がない人が多いと思いますので、少しでも多くの方に彼らの素敵な笑顔に接して、彼らのことを知ってもらうことが、誰にとっても生きやすい社会になるための第一歩かもしれません。

 思わず「ありがとう」と言いたくなる映画でした。