2012.5.21(月)
ある会合で、私の地元にある「小規模多機能型居宅介護事業所」(以下小規模多機能型と略)「たがらの家」を運営している方のお話と、介護保険上のデイサービスにそのまま自費で宿泊できるという、いわゆる「お泊りデイ」の職員の方からの現状報告を聞く機会がありました。
小規模多機能型の詳しい事業の説明をここでしても仕方がないので置いておきますが、地域での在宅生活を支える担い手として登場したにもかかわらず、実際にはなかなか事業所も利用者も増えないという現状があるようです。端的に言うと、運営や利用者確保が大変な割に、利益を上げることが難しいことが原因と言われています。
そんな中で「たがらの家」は、代表である青木さんがもともと経営やマネジメントの勉強をされたということもあり、マネジメントの視点を大事にしながら、丁寧なアセスメントを行って、利用者を家族とともに支援する姿勢を貫いていることが健全な経営に繋がっているのだろうなと感じました。
一方「お泊りデイ」については、狭い民家を利用して、バリアフリーでもなく、トイレや入浴設備も十分でない様子、デイサービス事業の指定要件でもある看護師が名前だけで、実質いないという状況、職員が疑問や改善を提案しても聞き入れてもらえずに、その職員の処遇にも厳しいものがある等々、利用者ご本人のことを考えると、聞いているうちに辛くなるようなお話しばかりでした。
ただでさえ介護保険の事業所が利用者を集めるのが困難な状況の中、そんなひどい事業所でもなぜ利用者が集まるのか、参入するところがかえって増えているのはなぜ?と当然の疑問が湧いてきます。もちろん全ての「お泊りデイ」がひどい環境とは限りませんし、良心的にやっているところもあるでしょう。
結局それはニーズがあるから、ということになります。認知症で在宅介護が難しくなったとしても、施設は何百人待ち等ですぐに入ることができないのが現実。そんな中ではデイサービスで、そのままずっと預かってもらえるということなら、たとえ費用が多少かかったとしても、家で看ることが難しい家族としては利用せざるを得ないということなのかもしれません。
それについて小規模多機能型の青木さんは、そういう施設がある現状はよくわかっているし、家族がご本人をそういうところに預けているのを一概に責めることはできない。それよりもケアマネージャーが、劣悪な施設の状況を知っているはずなのに、それをプランに入れてしまうことのほうが問題ではないか、とおっしゃっていたのが印象的でした。
介護や福祉の世界は、サービスを提供するのもされる側も「人」が中心にあって、大事にされるべきだと思います。いい仕事(介護)を提供する人がきちんと評価されないようでは、利用者にとってもいい介護を受けられないという悪循環になってしまいます。 法律や制度で改善されるのが一番ですが、今の制度の中でも、どうしたら利用者、介護者ともに安心して生活できるのか、関わる人それぞれが少しでも考えながら実践を重ねて、いずれ制度を動かしてやるぐらいの気持ちが必要なのかもしれません。