2012.1.16(月)
第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した中山七里の『さよならドビュッシー』とその続編ともいえる『おやすみラフマニノフ』を続けて読みました。『さよならドビュッシー』は自宅の火事で大やけどをおった音大生遥が、天才ピアニストで音大の先生である岬洋介の特訓を受けてピアノコンクールでの優勝をめざす物語。その中でさらに殺人が起こり、岬洋介が探偵のような推理を展開する。そして結構意外な結末。
全身大やけどで最初はピアノを数分しか集中して弾けなかった主人公が、いくら特訓を重ねたからといっても、いきなりコンクールに出場というのはどうなのか…とは思いましたが、登場する曲の表現が結構表情豊かで細かく、その曲を知っている人ならイメージしながら読めるのではないかと感じました。
『おやすみラフマニノフ』のほうは、岬洋介が講師を務める音大でチェロの名器が盗まれた事件を軸に、選抜された学生によるオーケストラの成長物語が展開され、最後は盗難事件がやはり岬洋介の推理によって解決するというもの。
こちらもオーケストラで演奏される曲の表現に『さよなら〜』同様の工夫が凝らされています。ピアノはソロ演奏が多いのに対し、オーケストラは個々の演奏者が集まってハーモニーを聴かせるものなので、いかに他者とのコミュニケーションを図るかが大事。個々の技量が高くないと集まってもいいものはできないし、かと言って個々のレベルが高くても必ずしもそれだけではいい音楽はできないので、そのあたりのメンバーの成長の過程が私としては面白いと思いました。また、音楽を通じて他の演奏家と深い付き合いができる小説の登場人物たちに、なんとなく嫉妬心にも似た感情を覚えました。
この2冊、『さよならドビュッシー』のほうが意外性があってミステリーっぽいかなと思いましたが、『おやすみラフマニノフ』は青春物語として楽しめた気がします。