間に合った遺言書〜後日談〜
2019年12月3日(火)
前回は、唯一の相続人であるお兄様が認知症になられた方が公正証書を作成して、お兄様のお子さんたちに遺産を残したという例を載せました。その遺言書には財産とは別に祭祀の承継についても書いておきました。私はご本人のご主人が生きていらっしゃるときからお手伝いしていたので、ご主人が亡くなられた際には葬儀の手配や火葬、納骨までお付き合いさせていただきました。その時には奥様は事前に「主人に万が一のことがあったら、ここに連絡してください」と連絡したい人や葬儀社についてもきちんと決めていらっしゃいました。お墓も群馬県で遠くはあるのですが、ご主人がそこがいいと決めて購入されたところがあって、ご主人のご両親もそこに眠っておられるので、ご主人はそちらに納骨されました。そして、永代供養の手続きもされていました。
そういった経緯があるので、私はてっきりご本人もご主人と一緒のお墓に入る希望をお持ちだと思っていました。そして、遺言書にも「夫と一緒の○○に納骨してほしい。時々はお参りに来てもらえると嬉しい」といった文言を入れておいたのです。
ところが、遺言書を作成してほどなくご本人が話をすることができなくなった時に、姪御さんから連絡があり、叔母が「実家のお墓に入れてもらうことはできるかしら?」と言ったのだけれど、何か聞いていますか?と言われたので、「えっ! そんな話は聞いていません」とびっくり! だって、遺言書を作成する際には、公証人が内容についてご本人の前で読み上げて「これでいいですか?」と確認し、ご本人は「大丈夫です」とお答えになっていたのですから。 しかも、姪御さんからその話を聞いた時にはご本人はもう意識がはっきりせず、話もできない状態だったので、確認しようもありません。ただ、姪御さんがご本人からその話を聞いたときに、「実家のお墓に入ってもいいよ」と答えたら、安心したようだったとのこと。さらに葬儀についても、ご主人の時には団地の集会所で関係する方をお呼びして行ったのですが、姪御さんたちは、そういう形式的なものには違和感があるので、自分達親族だけでこじんまりとやりたい、というご希望をお持ちでした。私としては、遺された方のお気持ちが大事だと思ったので、姪御さんたちの望まれる葬儀、納骨をされればよいと思いますとお伝えしました。
結局ご葬儀は行わず、直葬のような形で火葬炉の前でお別れをする形になりました。参列したのも姪御さん二人とその娘さん、そしてご本人のケアマネ、長くかかわってきた介護事業所の責任者、そして私という顔ぶれでした。その後、実家のお墓に無事納骨を済ませました、とのご連絡を姪御さんからいただいて、これで良かったのだろうなと安どしました。
結果的には色々なことが無事終わりましたが、遺言書を作成するときには、財産だけでなくて、祭祀承継その他についても、当たり前のことなのですが、きちんとご本人に確認しないといけないな、と深く反省しました。思い込みは怖いです。
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