家族信託についての講演会
2018年4月1日(日)
3月11日(日)に特定非営利法人成年後見推進ネットこれからの第11回総会が開催され、理事として再任されました。また、立ち上げから代表を務めてきた小泉晴子が10年の節目に退任し、石川正博が新しく代表に就任いたしました。今後とも新しくなった「これから」をどうぞよろしくお願いいたします。
この総会に先立ち、記念講演として「家族信託を知ろう〜安心の老後を過ごすために」と題して司法書士で家族信託普及協会会員でもある海埜千果(うみのちか)氏にお話をしていただきました。早い時期から各方面にチラシを配布したこともあり、当日はスタッフも含めると100名近い参加者が集まり、家族信託への関心の高さを感じました。
講師の説明は家族信託の基本的な仕組みから、信託を使ってうまくいった実例等家族信託の入門としてはわかりやすいものだったと思います。
信託の基本的な登場人物は3人で、自分の財産を預ける委託者、それを預かって管理、運用、処分等をする受託者、そして預けた財産の恩恵を受ける受益者です。家族信託の場合は親が委託者となって、受託者となる子どもに財産を預け、自分が受益者となって自分のために財産を使ってもらうという形が基本です。
例えば認知症対策としては、遺言や成年後見制度の利用も考えられますが、遺言は本人が亡くなった後にしか効力を発生させられないですし、成年後見制度は手続きが大変で時間もかかることに加え、家庭裁判所の監督を受けるので、財産の自由な管理処分が難しくなるという、どちらかというと短所があります。それに対して家族信託を導入すると、本人が認知症になった後も、裁判所の監督は受けることなく、受託者の判断で本人の財産を管理、利用、処分することが可能です。
他にも、複数の委託者が共有している不動産の管理を一人の受託者に一括して任せることができるので、例えば不動産の共有者の一人が認知症になってしまった場合でも、何もしていなければ成年後見制度を利用して裁判所の許可を得て処分をしなければいけないという煩雑なことになりますが、家族信託を利用することによって、受託者一人で手続きできるというメリットがあります。
このように書いていくと良いことばかりのように受け取られるかもしれませんが、受託者の権限の濫用を防止する手立てが必要であったり、委託者・受託者以外の家族との関係が難しく、かえって家族間の争いを生む可能性もあるといった面も理解して、上手に利用することが大事だと感じました。 何より、高齢者が元気で判断能力がしっかりしているうちに、自分の財産をどうしたいか、誰に託したいのかを考えて、家族できちんと話し合っておくことが大切です。そして、これは家族信託の導入を考える場合に限ったことではないですね。
NPO法人成年後見推進ネットこれからのブログにも講演会について載っていますので併せてご覧いただければ幸いです。